台風

朝起きて眠いまま自転車にまたがり、耳には"EsbjornSvenssonTrio"がながれ、五月にしてはずいぶんと涼しい空気の中を進む。
熱帯の海の上で生まれたグルグルと雨や風を吐き散らす低気圧が東京を射程にいれたころ僕はすでに家から15km程離れた明大前あたりの甲州街道をグングンと東へ向かっていた。首都高速が頭上にうねり、街道の両サイドには雑居ビル群。大原交差点でひんやりとした排気ガスと煙草を同時に吸っていると、横を走る冷凍トラックの冷却水が道の凸凹にあわせてパッと飛び散ったのかなと思えるぐらい微少な水滴が頬にあたった。でも上を見てみると細長いどんよりとした空に霧雨。しまった天気予報見ておけば良かったなと思った時にはすでに結構降り出していて、歩いている人たちは僕が見ていないそれをしっかり見ていたらしくその時を待ち構えていたかのように一斉に傘を差していく。幡ヶ谷のマクドナドを通りかかったとき雨宿りでもしようかなと思ったけどすぐ止むだろと勝手に思いこんでいて何かに急いでいるわけではないのにペダルに体重をかけスピードを上げる。いつのまにかイヤホンから音楽が流れていないことに気づかないぐらい雨足は強くなっていく。やばいなぁビショビショだと思い、さすがにコンビニに入る。傘を買っても自転車だし邪魔になるだけだと、どっぷりと濡れて帰ることを決意し、決意したら決意したで急に自分が透明でどろどろのモノになったように雨と自転車と溶け合って自動的に進んでいく。南へむかってやはりグングンと進んでいく。