自転車

真夜中に環七を北上したり南下したりする機会が増えたのは甲州街道から少し北へ商店街を抜けるとあるTの部屋へ行くようになったからだ。コンクリートむき出しの部屋の内側にはごろんとソファーベットが置かれている。Tは無類の映画好きでビデオテープが五列胸の高さまで積み上げてある。だからよく映画の話をするようになった。僕は映画はあまり見ないほうだけどTがあまりに面白そうに語るのでいくらか映画を覚えた。ホワイトのバランスが絶妙だとかこのカットの後の数秒でその空間のほとんどの情報が把握できてしまうとか映像のデザインについても考える事が多くなった。僕が今やっている本の設計もどこか映画のような部分があるので参考にさせてもらっている。